第7回・電子書籍市場
インプレスR&Dが公表した「電子書籍ビジネス調査報告書2009」によると、2009年3月期の国内電子書籍市場規模は前年度比31%増の464億円と推計されます。内訳は、携帯電話向けが402億円、PC向けが62億円と、携帯電話向け市場が圧倒的に大きくなっているのが特徴です。また、PC向けの市場規模は、前年度の72億円から62億円と初めて減少に転じています。電子書籍の市場規模は、文芸書やコミックス、写真集などの有料コンテンツの売上額を集計したもので、広告料収入をビジネスモデルにした無料コンテンツは市場規模に含まれません。
コンテンツ別の割合をみると、PC向けが文芸書(39%)、コミックス(33%)、写真集(28%)とほぼ均等になっているのに対して、携帯電話向けはコミックスが実に82%を占めています。携帯電話向けの市場が成長するきっかけとなったのが、2003年に導入された定額パケット料金制度です。ここ数年、PC向けの市場が伸び悩む中、携帯電話向けの市場は順調に成長を続けています。現状においては、日本の電子書籍市場は携帯電話向けのコミックスが支えているといってもいいでしょう。
電子雑誌や電子新聞など電子書籍の周辺分野も、徐々に市場が立ち上がりつつあります。シード・プランニングが2010年2月に公表したレポートによると、2015年には電子雑誌市場は105億円、電子新聞市場は130億円に拡大すると予測されています。電子新聞については、2010年3月に創刊された日本経済新聞・電子版がどのくらいの有料購読会員を集められるかが注目されます。アフィリエイトやネットオークションなどで販売される「情報商材」と呼ばれるデジタルコンテンツも電子書籍の一種といえますが、従来の流通経路を通さないため、どれくらいの市場規模があるのか実態はよくわかっていません。
アメリカの電子書籍市場規模は、アメリカ出版社協会(AAP)の集計によると2009年で3億1300万ドル(約282億円)と日本よりも小さな額にとどまっています。しかし、大手投資銀行のGoldman Sachs Groupが発表したレポートでは、2015年には2009年の約10倍にあたる31億9000万ドル(約2870億円)に拡大すると予想されています。2015年におけるアメリカの出版市場全体の規模は249億ドル(教育図書は除く)と見込まれていますので、電子書籍の比率は約13%に達する計算になります。注目されるのは、2015年における電子書籍市場の33%をApple社が占めると予想している点です。(2010年におけるApple社のシェア予測は10%)
| 2010年予測 | それ以降の予測 | ソース(発表時期) | |
| 日本 (電子書籍) |
464億円 (2008年度実績) |
インプレスR&D (2009年7月) | |
| 日本 (電子雑誌) |
2015年に105億円 | シード・プランニング (2010年2月) | |
| 日本 (電子新聞) |
2015年に130億円 | シード・プランニング (2010年2月) | |
| 日本(電子書籍端末台数) | 3万台 | 2014年度150万台 | 富士キメラ総研 (2010年4月) |
| アメリカ (電子書籍) |
3.13億ドル(2009年) (約282億円) |
2015年に31.9億ドル (約2870億円) |
Goldman Sachs Group (2010年4月) |
| アメリカ(電子書籍端末台数) | 600万台 | 2013年に1920万台 | Yankee Group (2010年1月) |
今後、アメリカの電子書籍市場が大きく伸びると予想されている背景には、Amazonの「Kindle」やAppleの「iPad」など電子書籍端末の急速な普及があります。Yankee Groupが公表したレポートによると、アメリカにおける電子書籍端末の出荷台数は、2010年の600万台から2013年には1920万台に急増すると見込まれています。電子書籍端末の定義が異なっている可能性もあり、単純比較はできませんが、富士キメラ総研が発表した調査結果では、日本での電子書籍端末の出荷台数予測は2014年度に150万台になっていて、いかにアメリカの数字が大きいかわかります。
-----------------------------------------------------------------
◎初出:2010年5月24日
-----------------------------------------------------------------
| 固定リンク
